火ノ鳥山の渇人
弓張り月
自分の事を思い出してみる。高い所から雲を見下ろしている。ただそれだけ。この力を使えば、あるいわ少し、記憶は蘇るかも知れない。だがそれにはただいな労力を使う事になる、2、3日動けなくなるかもしれない。俺にはそんなヒマない。シカを捕まえるので忙しいんだ!

「あ~今日も捕まえられなかったぁ。」

木から木に飛び移りながらロズの所に向かう、ロズ専用の釣り場。この山を流れる川は河口にやたらデカい魚がいて、とても助かる。

「お~いロズ!どうだ調子は?」

法力を使う事にも大分慣れた。ジャンプし近くの木から蔓を延ばし、先端に葉をつけその上に飛び乗る。そこからまたジャンプして、今度は違う木からまた蔓と葉を生成し乗る。この山に道なんて無い、俺はどんな方向にでもすぐ飛んで行けるんだ!

「上々よ!ナナシは?」

「へへへまた逃げられちった。」

「そう、でもしょうがないね。また次頑張りなよ。」

ロズ、この女は俺より年上らしい、確かに身長は俺より高いけど、顔は凄く幼顔だ。髪は肩位まででワンピース?(上着と下着がくっていてるやつ)を着てる。性格はキビキビしてて、凄く頼りになる。もうロズとの暮らしも2週間程経ったが、変わらずロズは俺を気にかけてくれる。
でもロズの様子が最近おかしい。なんだか口数も減ったし、注意散漫というか、よく転んでケガをする。


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