名無しのノート
今、先生は、な、なんと、言ったので、しょうか?
確か、転校と………

反射で皆は一斉に瑠璃香さんの方に顔を向けました。
わたしは、首をやっとのことで、動かしました。

そこには、頬杖をついたいつも通りの瑠璃香さん………ではありません。確かに、いつも通りですが少し震えています、そして…目が中を游いでいます。

「終わりの会で片瀬には、コメントを貰う。みんな、今日はいい思い出を作ってやれ」

みんなはざわついています。口々に
「まじか」「嘘っ」「急すぎるよ」
「可愛かったのに」「あんた…殴るよ」

そんなことを言っています。わたしは、頭が働きません。
授業は頭に入るはずありません。

瑠璃香さんになにも話しかけられません。そのまま終わりの会になりました。

「えーと、朝の会で言った通り、片瀬には、別れの言葉を言って貰う」

瑠璃香さんは教卓の前に立ちました。

「えー、わたしはこの度、転校することになりました。みなさん、ありがとうございました」

シンプルでした。
瑠璃香さんは続けます。

「私は、これからいろいろと用意することがあるので今から帰ります、それではさようなら」

瑠璃香さんは、教室を出ていきます、わたしはここまで…意気地無しなんでしょうか?

聞かなくては、聞かなくては、聞かなくては、聞かなくては、

ーコツコツ

足跡が遠ざかっていきます。

ーコツコツ

聞かなくては、聞かなくては………………聞かなくてはっ、ならないのです!

わたしは席から、乱暴に立ち上がり廊下に飛び出しました。
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