三叉路 ~three roads~
彼女の失恋
キィ、キィ……。


めっきり涼しくなってきた9月の夕暮れ、私は公園のブランコに座り、爪先を地面につけながら小さく前後にこいでいた。


そんな単調な動きを繰り返しながら私は今、口に出すべき言葉をいろいろ思い浮かべては声に出そうとしたが、どれも気の利いた言葉じゃないような気がして、そのたびに言葉を飲み込んでいた。


静まり返った小さな公園には、元気に遊ぶ子供達の姿はもう無く、カラスの鳴き声と、時折公園の前の道路を通る車のエンジン音と、


―――隣のブランコに座っている友達の静かに鼻をすすっている音だけが聞こえていた。
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