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それが、今から一週間前のこと。

ここは茅野のいた世界でいうところの、異世界、というものらしい。
長さや重さの共通単位や食べ物、そしてはじめに見た通り住んでいる生き物など、茅野の知っている常識の大半が通用しないのだ。

単位や文字については、猛勉強の真っ最中だ。
食べ物は見たことのない外見をしているものが多く、最初の二日ほどは口に運ぶのを躊躇っていた。
だが食べてしまえばなんてことはなく、ただ見た目と名前が違うだけだと思えば、口に合わないものはほとんどない。

助かったのは、なぜか言葉が通じることと、時間の単位がもといた世界と変わらないことだった。

この二つに当面の問題がなかったおかげで、ずいぶんすんなりとこの状況を受け入れられたように思える。
ここまで一度も狼狽えたり取り乱したりしていないのはそのおかげなのか、それとも茅野がもともと図太いのかどうかは、前例がないのでなんともいえない。


とりあえず生きていくために、この動物園で働こうと決めたのは、つい二日前のことだ。

突然どこからともなく現れた少女に、ラビや動物園の職員たちはずいぶん親切にしてくれた。
わけのわからないことを言う見たことのない服を着た少女を放り出すのは簡単なのに、食事をくれて、寝る場所をくれて、質問ばかりの茅野にできるだけわかりやすい答えまでくれた。

物珍しさもあるのかもしれない。
だがここまで親身にしてもらって、なにもせずにただ居候するのが落ち着かなくなって、茅野からここで働きたいと言い出したのだ。

そんなわけで飼育員修行として、まずは茅野にやけに懐いているドラゴンの子供、ピーキーの世話からはじめることになったのだった。


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