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そんな格好なわけだから、からかわれるのも仕方のないことという見方もあるかもしれない。
だが、条に関して言えば、彼のこれは癖や趣味のようなものと言ってよかった。
「まあ、俺としては別にいいんだけどね」
「はあ……すみません……」
「むしろ大歓迎。目の保養だし? いい脚してるよねー」
「え、えぇ?」
首まで真っ赤にした森を見て、条がにやにやと笑みを浮かべる。
彼のそういった発言はいつものことで、その上、相手は森だけではない。
この動物園で働く女子職員で、条に口説かれたことのない者はいない、というほどなのだ。
楽しそうに叩く軽口はセクハラ発言ととられても文句の言えないものだったが、口調があまりに優しげで軽いのと、切れ長の目が送る流し目のせいで、多くの女子職員には満更でもなく受け取られている。
つくづく顔で得をしている男だと、茅野は密かに思っていた。
「俺だって思わず触りたくなっちゃうのに。人肌好きなヒヨコたちならそりゃ、すっ飛んでくのも当たり前だよねえ」
もうやめてくださいよう、と泣きそうな声を上げる森の肩に手を乗せる。
ちなみに、条が言っている“ヒヨコ”というのは、ただのヒヨコではない。
茅野も最初は、あの小さくてコロコロと丸っこくて可愛らしい、彼女の知っているヒヨコを想像していた。
だが、それは大きな間違いだった。