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大きい。
そして速い。
茅野の知るヒヨコとの共通点は、丸くて黄色いことくらいだ。
『緑のゾーン』に足を踏み入れるとまず、ドッジボール大の真ん丸でふわふわしたものが、物凄い速さで飛んでくる。
急襲といって大袈裟でないその生き物こそが、“ヒヨコ”なのだ。
大きいし速いが、メレンゲよりもふわふわもこもこな上に、驚くほど軽い。
体の四分の三ほどは毛でできているのではないかというほどだ。
なので突進されても怪我をする危険はほとんどなく、ただあちこちから綿の塊がぶつかってくる、その程度である。
ちなみに成鳥であるハトリの姿は、茅野の感想でいうと「大型犬くらいの綿」。
大きさはあるが軽いので、時々子供たちと一緒になってすっ飛んでくることもあるが、やはり「顔に綿の塊が被さってくる」くらいの感覚だ。
彼らが人に突進するのは暖かいものが好きで、体温の高い動物に寄って来るという習性のせいだ。
つまり、露出が多く、しかも特に暖かい腹部などを無防備に出している森は、ヒヨコたちにとっては絶好の“暖”というわけだ。