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食事とブラッシングが終わると、空を飛んで遊びに行くのが、ピーキーの日課だった。
いつもは広い樹のゾーンにいるが、別に鎖で繋がれているわけでもない。
檻も高く周りを囲ってあるだけで、当然上空はがら空きだ。
羽のある動物ならば、なんでも簡単に行き来できるようになっていた。
ピーキーが大きな翼で風を起こし、巨体を持ち上げて頭上高くへと上って行く。
体を回転させながら天へと上っていくその飛び方が好きらしく、茅野がここへ来てからその姿はよく見ている。
楽しそうに上空を旋回するピーキーを見上げながら、茅野はこれを見て最初にラビとした会話を思い出した。
『勝手に出られるんですか?』
『園からは出ないよ。他のところじゃ餌の確保が大変だからな』
『そうじゃなくて、檻の外に、』
『え?』
あの時ラビは、不思議そうな顔で『当たり前だろ』と言ったのだ。
『閉じ込めておくなんて、できるわけないだろ』、と。
それを聞いて茅野は、戸惑った。
つい直前まで自分が見ていたものを思っていたのだ。
『でも、私のいたところの動物園では、勝手に逃げちゃいそうな鳥とか危ない生き物は全部、網を張ったり、脚に鎖を繋いだりして』
茅野の言葉に、ラビは白い縁の眼鏡の向こうで、顔をしかめた。
『なんだよ、その動物園』
手を離された物がぼとりと落ちるみたいだ。
そんなふうに言葉を落とす。
『信じらんねえな。翼があるのに、飛べないなんて』
かわいそうに、とラビは言った。
まさに目の前に、重い鎖で飛べずにもがいている鳥がいるような言い方だった。