矢刺さる先に花開く


元々肝の据わった父。


だが、上皇に意見しかもあんな厳しい言葉が言えるとは思ってもみなかった。


衝撃が減る間も無く六波羅の館に着き…直ぐに耳に入ってきた『池禅尼危篤』の知らせにやっと我に帰った重盛は、経子を伴い池殿へ向かった。


弱りきった池禅尼は、清盛の昇進を喜びながら、子や孫たちに囲まれ、その生涯を終えた。


(禅尼さま……)


経子にとっても、父の従姉妹であった池禅尼の死は悲しむべき事であった。


――「経子…私は決めた。修羅の道を真っ直ぐに突き進んでおられる、父上を影に日向にお支え致すことを」


一門で禅尼を看取り、自分たちの館に戻った重盛は経子に宣言した。


「殿には…茨の道となりましょうな?」


「それでもだ」


経子には、重盛が何を経験してきたのかはわからない。


ただ、希望に満ちた堂々とした夫の姿を経子も、影に日向に支えようと決めた。


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