矢刺さる先に花開く


皆が祈った甲斐があったのか、程なくして清盛の病は良くなり、今までと変わらぬ生活が送れるようになっていた。


一門中が喜んだのだが……。


経子は、重盛の顔に未だ見える陰を見逃さなかった。


――「そなた、後悔はしておらぬか」


その日の夜。
夫に酌をしていた経子はその言葉に首を傾げた。


「後悔…とは」


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