矢刺さる先に花開く


「かような夫のもとに嫁いだことを、だ…」


「!?…何故、左様なことを仰せになるのですかっ」


重盛の言葉に経子は目を大きく見開いた。


「先日、叔父上が父上の跡を継ぐべきは宗盛だと仰せになられたのを聞いてしまったのだ……」


時子の弟・時忠は時期棟梁に相応しいは正妻の長男である宗盛だと言い張っているのだ。


「私は母上の子ではない故…先妻の子である私が嫡男である道理がないと……」


震える声で話す重盛。


「だから…かような私だから…そなたにも苦労をさせておるのではないかと」


そこまで言った重盛は言葉を止めた。


経子が重盛を抱き締めていたのだ。


< 120 / 164 >

この作品をシェア

pagetop