矢刺さる先に花開く


「……誠にすまなんだ…」


今度聞こえたのは涙を堪えているような声だった。


(……お辛いのでしょうね…。かような私は、この御方のお力にはなれますでしょうか…)


経子は、引っ込めていた手で重盛の背を擦った。


――経子の肩に、一滴の雫が落ちた。


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