矢刺さる先に花開く
棟梁


清盛が出家したのは、それから間も無かった。


「福原の地に邸を構えておる。わしは暫し都を離れる故」


(と、言うことは)


…重盛が、棟梁の座に就くということを意味していた。


――「経子殿…棟梁の妻として、今以上に大変なことがあるということは覚悟しておかねばならぬ。でも、私で良ければ、いつでも力になる故」


ふいに時子が言った。


「ありがとうござりまする、御義母上様」


「重盛が経子殿以上に信頼している者はおらぬ…確と支えて下さりますよう」


「はい。その様に努めて参ります」


その言葉を聞き、時子は微笑んだ。


「懐かしや…我が殿が棟梁となった時のことを思い出すのう」


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