矢刺さる先に花開く
そんな矢先のことだった。
「資盛!?如何したのだ」
元服した重次――資盛が、鷹狩りから傷だらけで帰ってきたのだ。
話を聞くと、鷹狩りの帰りに資盛の輿は、摂政・基房の輿と鉢合わせになったらしい。
本来ならば輿を降りて礼をせねばならぬところを、資盛は両親に早く獲物を見せたいばかりに、輿を降りなかった。
それが基房の怒りに触れ、基房の従者たちは資盛を輿から引き摺り出し、その家人たちにも狼藉を働き、資盛自身も怪我を負って帰ってきたのだ。
「大事ないか?」
心配して駆け寄る経子に資盛が向ける瞳には涙が溜まっていた。
「…母上…っ…」