矢刺さる先に花開く


暫く経子の腕の中で噎び泣いていた重盛は、最後に一言、静かに言った。


「…っなれぬ。私は、父上には…なれぬ……」


(――!!……殿…なんてお労しいこと…)


もう、重盛が苦しむ姿は見たくない。


だけど、顔を背けてはならない。


(貴方様のお苦しみ、経子が少しでもお軽くして差し上げとうございます……)


二人はそのまま静かに泣き続けた。


――これが、後に殿下乗合事件と呼ばれる騒動であった。


< 135 / 164 >

この作品をシェア

pagetop