矢刺さる先に花開く

待賢門―重盛―



これほどまでに勝ちたいと強く思った戦が己にはあっただろうか。


…いや、無論いつも勝ちたいと願うておるのだが。


あの経子がついに我が子を身籠ったのだ。
如何なることになっても、勝って戻りたい。


重太や重次が大切なのは変わらぬが、やはり、今から誕生が待ち遠しい。


(これからは、守らねばならぬものが増えるのだ…)


…などと思っていたら、自然と力が漲ってくるようだった。


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