君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
「空斗…。」




あたしはふらふら立ち上がると屋上に向かった。




――――――――――――――




空斗。




あたし今“ココ”に来ているよ。



2人の思い出の場所。



ココで2人で一杯笑ったね。



でも今は1人で一杯泣いている。



誰かにすがりつきたくなる。



寂しくて、悲しくて。



誰でもいい。



このボロボロの心を癒してほしい。



抱きしめてほしい。




“大丈夫。俺には琴音が必要だよ”って。




でも…やっぱり空斗…君にして欲しい。




ワガママだよね…。




もう、出来やしないのに。




君の事を考えている時間が1番幸せだったのにね。




今は1番辛いよ…。




でも、大丈夫。




あたしね、もう前を向くんだ。




君からもらった幸せと傷跡を抱えて歩きだすよ。




痛みを知ったあたしはきっと前より強い。




人に優しくだって出来る。




だからね、ずっと見守ってて?




あなたを困らせないように涙をこらえて精一杯笑うから。




あたしは空に向かってニッコリと笑った。




「今から、心臓移植だよ、空斗。あたしと君が一つになるんだ…。」




そう言い残してあたしは屋上を後にした。
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