君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
ーーー


ベッドに戻り、看護師に点滴をしてもらう。


「はい、おしまい。


あのね、何度も言うけどあの屋上は“立ち入り禁止”!!


わかってるの?


あなたがいなくなったら困るのよ!?」


困る…?そんなわけないじゃん。


あたしがいなくなったところで、何も変わらない。


こんな…ボロボロな人間。


親が離婚して、あたしは母に引き取られた。


それから、あたしの顔から笑みが消えた。


毎日のように違う男を連れ込んでくる母。


そして、あたしに浴びせられる罵声。


『あんたなんか消えればいいのに。』


『あんたの顔なんて見たくない』…


ねぇ、母さん?


どうしてあたしを産んだの?


必要ないなら、産まないでよ‼


そんなことを考えていると、また無意識に足が屋上へ向かっていたんだ。
< 5 / 234 >

この作品をシェア

pagetop