曖昧メール
一通目


今日からあたし、刹那は高校生になる。

と言ってもあたしの学校は所謂、中高一貫校なんて言われる学校で。

残念ながら中学と高校の違いはそんなにない。

制服だって、女子はリボンが赤から青に、男子は学ランのボタンが金から銀に変わるくらい。
校舎だって変わらないし、規則だってそんなに緩くはならない。


まぁ、言ってしまえば中学からの延長線上に高校があるのである。

そんな中でもっとも大きな変化と言えばクラスが二クラス分増える。ということくらい。

中学三年間彼氏の一人も居なかった私はある意味この高校生活に期待しているところが少なからずあった。


乗りなれたはずの電車も今日ばかりは特別に思えたし、毎日降りていた駅はいつもよりキラキラしてみえた。


電車を降りて、改札口付近についたとき

「あ、刹那ー!」

中学からの友達の一人、真夏に会った。

真夏は頭もよくて、優しくて、積極的な女の子。
それゆえたまに他の女子から妬まれることもしばしばあることはあるのだが…

「おはよう!」
「おはよ、真夏」
「今日から高校生だね、ふふふふ…」
「え、うん…え…?」
「恋しなくちゃねっー!!」

彼女の性格的にそんなことはものともしない。

約五分間程度、駅から学校までの道を真夏と歩きながらそんな話をしていた。

まぁ確かに花も恥らう女子高生、恋の一つもしたいもの。
それはいくら中学の時に誰とも付き合わなかったあたしだって少なからず思うところだった。


学校について、とりあえず中学からの持ち上がり組みは中三のクラスで召集を掛けられた。
真夏は三年四組、あたしは三年一組
ということで新入生が集められるホールの前で一度真夏とは別れ、自分のクラスの場所へ向かった。

春休みの間会っていなかった友達とわいわいしながらこれから始まる高校生活の話に花を咲かせていれば、ホールの中に先生達が入ってきた。


「あと二十分で体育館に移動してもらいます。制服を整えておくことー、特に中入生!高校と中学を同じように考えんなよー。」

中入生ってのは中学からの持ち上がり、つまり私たちのこと。
高校から入ってくる子達は高入生なんて呼ばれていたりする。



スカート丈は中学生の頃より少しだけ短くて、リボンの長さも少しだけ伸ばして。


中学生の頃から通っている学校なのに不思議と新しい場所に思えた。

背筋を伸ばして、体育館に足を踏み入れれば四月の始まりを感じさせる入学式が幕をあける。



式辞やら何やら堅苦しい話しも今日だけは何故か真剣に耳を傾けられた。






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