何度でも何度でも…
「ただ…」

少しの沈黙の後、海斗がおもむろに口を開いた

視線を外し、海斗は眼鏡の奥で優しく微笑む

海斗を見上げながら続きの言葉を待つ

「ただ、あわよくばずっとそばにいてほしいと思うけど」

ついでに、誰かにくれてやるつもりなんてないけどね

ふと不敵にほほ笑みながらそう言った海斗の横顔を見つめる

微笑みながらそっと頬をつけた肩は、いつになく暖かだった

こうして隣に居られるだけでいい

そう思うようになったのはいつからだろうか

休みの日に着飾ってデートをしたり、クリスマスやお正月というイベントの日に一緒にいるよりも

ただ何気ない日常が

隣に海斗がいることが

仕事をする海斗の膝に頭を乗せてまどろむ時間が

二人で何気ない話をする夜が

ゆっくりと散歩する沈黙の流れる時が

つながれた手が

愛おしく、大切なものになったのは

いったいいつからだっただろう
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