シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「何も言ってくれないって言われても、何を言えばいいか分からないですし……」
「簡単だよ。さっき羽田さんに言ってた事を言えばいいんだから」
「……さっき聞いてたならいいじゃないですか。
そういう事です。……ので、離してください」


告白するつもりではいたけれど。
こんな近距離で無理やり顔を合わせながらなんて考えてもいなかったし、ハードルが高すぎる。
今目の前にあるハードルは、走り出す前に諦める高さだし。

もっと距離と心の準備をする時間がないと無理だ。
告白なんて今までした事ないんだから。

目を逸らして早口に言ったけれど、やっぱりそれでは許してもらえるハズもなく、腰に巻きついた腕が解放してくれない。

羽田さんとあんなに戦ったんだから、私の気持ちは十分伝わってると思うのに。
直接愛の言葉を口にしない限り満足してもらえないらしい。

五十嵐さんって結構面倒だな、と、告白できない自分を棚に上げて心の中で毒づく。






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