シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「私の気持ち分かってるくせにわざと言わせるのはズルいです」
「まぁ、分かってはいるけどね。
あんな風に羽田さんと真正面から向き合ってくれてる姿見せてくれたわけだし」
「だったらそれでいいじゃないですか。
……私がそういう事言うの苦手だって分かってるでしょ。
いじめないでください」


いじめないでくださいって言うか、もう勘弁してください。本当に。

そんな思いで必死に言うと、五十嵐さんは「見逃してあげてもいいよ」と微笑む。
それから、「葉月からキスしてくれたら、それを告白代わりに受け取るよ」と付け足した。

ああ、なんだ。そんな事。なんて思った私はどこかおかしいんだと思う。
好きって一言言うより、自分からキスする方が楽だと考えたのだから。

でも五十嵐さんからキスされる事はもう日常と化しているし、そこまで抵抗がないのは確かだった。
盗聴されている危険があるなら話も別だけど。



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