シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「野田さん。もう呼び捨てするような関係ではないですから、名字でお願いします」
「そんな固い事言うなって」
「ついでに、私の方が入社時期的には先輩にあたるので、できれば敬語でお願いします」
私は高卒で入社したから、野田さんよりも四年も前に入社した事になる。
同じ歳だから敬語はどちらでもいいけど、最初からため口で話していたら周りから変な疑いをかけられそうだし。
「ああ、そっか。葉月はもう四年目だっけ。お局じゃん。
古株ってやつ?」
こういうところは、高校の頃から全然変わらないなぁと呆れる。
別れた理由は色々あるけど、彼のデリカシーのなさに嫌気が差したのも大きな原因だった。
散々不愉快になるような言葉を言われ続けたけど、今でも頭の中から消えてくれない言葉がひとつだけある。
彼と別れた後も、他の誰かと付き合ってからも、ずっと頭から離れてくれなかった言葉が。