シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「お局とかそんな事、社内では絶対に言わないでくださいね。
同じ課にいる人は、ほとんどが私よりも年上なんですから。
女子社員に嫌われたら社内でうまくやっていけないって事くらい、野田さんにも分かるでしょ」


振り向いて注意すると、彼はキョトンとした後ふっと笑う。


「了解。変わらないなー、そういう面倒見いいところ」


別に野田さんが女子社員の目の敵にされようが干されようがどうでもいいけど、社内で変な空気が流れるのは面倒だから。
ただでさえ、取り扱っている商品がお金だから、細かくて月末月初なんかぴりぴりしてるのに、そこに人間関係のぴりぴりが足されるなんて絶対に嫌だ。

そういうつもりで忠告しただけなのに、この男はどうやら自分のために言ってくれたと受け取ったらしい。
もう何を言っても無駄な気がして、何も言わずにまた前を向いて歩き出す。

野田さんは、「あ、待てって」と言いながら私の後ろにかけよってきて。
まだ帰る気はないらしく、ため息を落とす。





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