青色キャンバス


「私も、雛先輩の絵を見て美術部入ったんですよ!」



菜緒ちゃん……


二人の言葉はいつも私の存在を許してくれる。こんな私に、「ここにいてもいいんだよ」って…



私はもらうばかりで、私は何もあげられないと思ってたけど…


私にもあなた達にあげられるものがあったんだね…



「先輩なら出来るよ。先輩は絵に真剣だし、何より大切にしてるものでしょ?」



絵に真剣…か…  


「どうだろう…私は……」


絵に没頭している間はあの人の事を忘れられた。
だから毎日毎日、無心で筆を走らせた。


―絵に、逃げてた……



「逃げ道…だったの…」

「逃げ道?」


秋君は首を傾げる。



そう、逃げ道。
私が 見つけた居心地の良い逃げ道…



そこにはあの雨の冷たさも、傷の痛みも、燃えたバスも無い。



私が思い描く世界だけがある。
楽だった。
何もかも忘れられたから………






















< 122 / 214 >

この作品をシェア

pagetop