青色キャンバス


「夢中でいられれば、嫌な事考えずにいられるから…」


蛍ちゃんの事を忘れられるわけじゃない。


むしろ絵はあの人を想い出させる。


絵は私と蛍ちゃんを繋ぎ合わせた物だから。


それでも……


自分の無力さも、後悔も、絵を書いている時は蛍ちゃんとの幸せな時間だけを想い出せる。



だから私は、ただ夢中に、ただひたすらに筆をとる。



「嫌な事…。先輩が泣いてたのって、その事と関係あるの?」

「……………………」


「夢中にならなきゃいけないくらい辛い事?」


秋君は真剣な瞳で私を見つめる。


なんて真っ直ぐな瞳なんだろう。とても綺麗で、今の迷いだらけの私には痛い。



耐え切れず秋君から目をそらした。



「…まぁ色々あるの」


それ以上は聞かないでと遠回しに突き放す。


まだ私は、蛍ちゃんの事に向き合うだけの勇気は無い。


今は思い出すだけで心が軋む。言葉になんかしたら…


きっと心が粉々になる…








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