最悪から始まった最高の恋
実はあまりお酒は強くなかったし、普段は全くに近い程口にしない。家系的にアルコールの弱い家系なのかも知れないと感じていた。
 父が健在の頃、お店のお客様から、カウンター越しに高いお酒をご馳走になる事があったが、「ありがたく頂戴します」と丁寧に挨拶をして、ほんの少し口を付ける素振りを見せてから、お客様に見えない所にご馳走になった器を下げて、こっそり捨ててた。
 父はお酒もタバコもやらない人で、見た目は厳つい感じでお酒がとても好きで強そうに見えるのだが、実はとても弱くて、和菓子好きの甘党で、可愛い一面があった。祖父もそうだった。そして、私もその血を受け継いだのかもしれないと彩菜自信感じていた。アルコールは苦手……。

「美味しい……」

 でも……。円城寺社長からご馳走になったあの日本酒……。一口飲んで凄く美味しかった。
 喉を通過して、すうーっと体に広がる美味しさと言うのだろうか……。染み渡るような奥深い味わいがあり、ものすごく上質の良いお酒なのだろうなと感じた。

 アルコールの弱い者は、飲み方を知らない……。ひとくち、もうひとくちと、いつの間にか結構体の中に入れてしまっていたようだ。

 いつの間にか意識を手放し、私は眠ってしまったらしい……。そして……。全く思い出せないのだが、お持ち帰りされてしまったようだ……。
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