桜涙 ~キミとの約束~
昔から奏ちゃんは、心美ちゃんをとても可愛がっている。
年が離れているせいもあるけど、赤ちゃんの頃から人見知りをせず、誰からも愛されるその性格がゆえだろう。
実際、私とリクも心美ちゃんをとても気に入っていて、自分の妹にしたいくらいだという話をした事もあったり。
相変わらず可愛いなぁ、なんて奏ちゃんに頭を撫でられている心美ちゃんを眺めていたら、開け放たれていたリビングの扉から、今度は奏ちゃんのお母さんが現れた。
「いらっしゃい、二人共」
奏ちゃんのお母さんはニッコリと私とリクに笑顔を向けてくれる。
艶のいい長い黒髪がサラリと肩から流れた。
「おじゃまします」
私が笑顔で応えると、リクもペコリと会釈した。
それにまた笑顔で応えた奏ちゃんのお母さんの視線が、自分の息子へと向かった……次の瞬間。