桜涙 ~キミとの約束~


「あれ、起きてた? せっかく来たのに残念」

「どうして残念なの?」


ベッドに横になったまま問いかければ、リクはニコッと笑って。


「寝てたらチューしてやろうかと思って」


冗談だとはわかってるけど、そんな事をサラリと言うリクの思考回路がわからない。

とりあえず相手にしてもしょうがないと黙っていると、気まずさを感じたのかリクの笑みが苦いものに変わった。


「ウソ、ウソですごめんなさい」


謝ったあと、今度は見慣れた微笑みを浮かべるリク。


「本当はお前を送りに来たんだ」


そう言ったリクの手には、二人分の鞄。

ひとつはリクので、もうひとつのは私の鞄だった。

それを足元に置くリクを見ながら、どうして私が具合悪くて保健室にいるのを知っていたのか聞けば、よっちんから聞いたのだと教えてくれた。

授業に戻ってこなかったから、よっちんなりに判断してくれたんだろう。


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