もうひとつの恋
――えっ!?


何?もしかして俺、このために呼ばれたわけ?


ショックすぎて呆然としている俺を見て、さとみさんが慌てて否定する。


「ちょっ!美咲!!
何言ってんのよ!

違うからね?桜井くん……
気にしないで?」


上目遣いにそう言われて、俺は思わず顔が緩んだ。


「うわっ!

桜井……気持ち悪っ!

何、さとみに見つめられて喜んでんのよ」


「ばっ!何言ってんすか!

わかりましたよ!

撮ればいんでしょ?撮れば!」


図星を指されて慌てた俺は、ビデオカメラで顔を隠す。


「だって桜井、背高いから、障害物なく健太が撮れるでしょ?

ほんとは私が撮る予定だったんだけど、桜井がいるんならそっちのが効率いいと思ってさ」


「はいはい……そういうことにしときますよ

あっ!もう始まるから美咲さん黙って!」


そう俺が適当にあしらうと不満そうな顔をしながらも、健太の出番を待つために前を向いて大人しくなった。


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