もうひとつの恋
もし……女と会うんだとしたら課長はその気じゃなくても、最後には奥さんが悲しむような気がして釘を刺すように……でも冗談めかしてそう言ってみる。



「何、ばかなこと言ってんだよ?
そんなんじゃないって」


当然、課長は否定してくるけど、なんだか妙に胸騒ぎがした。


「あんな可愛い奥さん泣かせたら、許さないですからね?」


俺は笑いながら、もう一度願いをこめて課長に警告する。


「心配してくれるのはありがたいけど、浮気とかそういうんじゃないから」


課長の目をじっと見る。


嘘はついていないようだった。


いまだ拭いされないこの嫌な感じをなんとか納得させて、いそいそと帰っていく課長の背中を睨み付けるように見送った。

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