もうひとつの恋
落ち着かない様子の美咲さんを横目でチラッと見ながら、俺はそう問いかける。


美咲さんは何かの呪文を唱えるようにブツブツと何かを呟いてる。


「27歳……

控え目……清楚……」


やっぱり何か変だ……


絶対いつもの美咲さんじゃない。


俺はさすがに心配になって、俯いてブツブツ呟く美咲さんの顔を覗きこんだ。


「美咲さん?

やっぱり今日おかしいですよ?

どうかしたんですか?」


目の前の美咲さんの顔が、一瞬にして真っ赤になる。


――えっ!?


俺が驚いた顔をすると、彼女は急に席を立った。


「ごっ……ごめん!

あたしやっぱり帰る!

なんかちょっと今日は体調悪いみたい」


それだけを早口で言うと、俺を置いて一目散に出口に向かっていく。


俺は何がなんだかわからなくて慌てて美咲さんを追いかけた。


「ちょっ!!
待ってくださいって!

急にどうしたんすか?

体調悪いなら俺、送っていきますから!」


美咲さんの腕を掴んでそう言うと、彼女は俺から顔を背けた。


「いいって!大丈夫!

一人で帰れるから!」


俺の掴んだ手を離そうと、必死に腕を振りながら、そう叫ぶ。


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