もうひとつの恋



怠い体を引きずりながら、純は銀座に向かう電車に乗っていた。


休みの日の夕方に出掛けるという面倒くささにうんざりしながら、窓の外に流れている景色をぼんやりと眺める。


あれから結局、美咲さんから何の音沙汰もなく今日を迎えてしまった。


さとみさんから放っておけばいいと言われたこともあって、その日から俺は自分から連絡するのを止めている。


だけどもしかしたら彼女から連絡があるんじゃないかと、どこかで期待していたんだけど……


やっぱり連絡はなく、俺は正直ショックを受けていた。


でもまだ自分の気持ちがわからない以上、会いに行くことも出来なくて、ジレンマを感じている。


そんなことを考えながら、もう一度窓の外を見ると、そこにはもう何の景色も映らない真っ暗な闇があるだけだった。


いつの間にか地下に入ってたんだな……


自分がそんなことにも気づかないくらい、美咲さんのことを考えてたのかと苦笑する。


地下に入ってしばらくすると、目的地の銀座に到着した。


腕時計をチラッと確認すると、まだ約束の時間まで30分もある。


< 300 / 432 >

この作品をシェア

pagetop