もうひとつの恋
ようやく受け入れてもらえたプロポーズのいきさつは、部長達には言うつもりもない。


仕方なく俺は部長達を納得させるような理由を話すことにした。


「俺達、子供は欲しいと思ってるんで、美咲さんの年齢的なこともあるし、だったら早く結婚しようかってことになりました」


そんな俺の説明で、二人は納得してくれたようだ。


「まあそう言われりゃそうだな?

美咲、良かったな?
おめでとう!」


「うん、ほんとに良かった

私も自分のことみたいに嬉しい

桜井くん、美咲を幸せにしてあげてね?」


二人が口々に祝福の言葉を投げ掛けてくれると、なんだか妙に照れ臭くなる。


「わかってます

さとみさんより幸せにしちゃいますから」


ハハッと笑いながらそう言うと、部長とさとみさんもつられて笑った。


それまで隣でみんなのやり取りをじっと聞いていた美咲さんが、ふいに口を開く。


「私……幸せになる

さとみ、健……ありがとう」


四年間、いろんなことがあった。


さとみさんを好きになって……


部長を軽蔑して……


さとみさんに振られて……


部長をさとみさんに会わせて……


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