もうひとつの恋
萌音をゆっくりと降ろして頭を撫でてやりながら、美咲の頬に唇を寄せた。


「……ちょっ!!」


その瞬間、おもいっきり突き飛ばされて、よろけそうになるのを何とか堪えた。


「なっ、なっ、何やってんのよ!

こんな真っ昼間から、しかも公園だよ?

もうやだぁ……」


よっぽど恥ずかしかったのか、美咲は片手で顔を隠しながら脱力してしまう。


傍で見ていた萌音が、不思議そうに美咲の顔を見上げた。


「ママ?

パパとチュウするの、やなの?」


「……違っ!」


素朴すぎる質問に、美咲は思わず違うと言いそうになって、ますます顔を赤らめた。


恨みがましい目で俺を睨むと、どうにかしてくれというように、顎をしゃくる。


はいはい、と言いながらもう一度萌音を抱きあけると、髪を撫でながら優しく言い聞かせた。


「あのね?ママはチュウ大好きなんだけどね?

お外でするのは恥ずかしかったんだよ

なんでだろうねぇ?」


ククッと笑いを堪えながらそう言うと、萌音はやっぱり不思議そうに首を傾げる。


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