【短】ブランシュ・グロウ


こんなに、雪を見て美しいと思ったこと、なかった。



「空の魔法みたいですよね、雪って」


にっこりとした笑みに、つられる。嗚呼、その表現がしっくりくる。


「ごめん、靴ひも」と断りを入れて、結び直す――フリをする。


本当は、数歩ぶん前で待ってくれる浮かれた彼女を見てたくて。子供みたい。


――「大丈夫?」の声に、「大丈夫」と答えるので精一杯。



 ▽▲



車の通りが割りと多い横断歩道にさしかかったところで、「ここでいいです」が来た。


正直、名残惜しいのが勝るけど、表に出さないように努力。


「これ渡ってすぐなので」

「……っス」

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