僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

体が動かないのと一緒に、脳みそまで止まってしまえたら、どれだけ楽だったんだろう。

声も出せないのに、息も出来ないのに。


ふたりの言葉は、こんなにもわたしに刺さるんだ。


「……もう」


もう何も言わないで。それ以上言わないで。


「私はもうこんな生活いやなのよ!!」

「俺だってうんざりだ!!」



どんどん世界が汚れていく。

何も見えなくなっていく。

真っ暗な中から抜け出せない。


たったひとつの、光も見えない。



「もう……やめて」


大声を、出したつもりだった。

でも出た声はあまりにも頼りなく、情けない。


それでも聞こえていた。

ふたりの目が、揃ってもう一度わたしを見た。


「…………」


ふたりがハッと息を呑むのがわかって、もしかして泣いてしまっていたのかと思った。

でもわたしの頬は渇いたままだ。ロクに、泣けもしないんだから。


口の中がカラカラに渇いていた。

やっと思い出した呼吸もへたくそで、吸っているのか吐いているのかよくわからない。


涙は出ていないはずなのに不鮮明だった。

目に映る世界。小さな世界。


大好きだったはずの、わたしの、世界。

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