朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「稚夜様、次はお勉強の時間です」


 文官の礼服を着た賢そうな男が、遠くから声を掛けた。


「もうそんな時間か。僕もう行かなきゃ。明日も来てくれますか? 姉さま」


「もちろん。稚夜に稽古をする約束もしたしな」


 稚夜は嬉しそうに笑った。


ほっぺがプニプニで、とても可愛いと思った。


「あと、ここだけの話……」


 稚夜は柚の耳に顔を近付けて、内緒話をするように口の周りを両手で塞いだ。


「貴次は他人に厳しくて腹黒いけど、本当はとっても優しいんです。姉さまもきっと、貴次のいいところが分かる日がくると思います」


 柚は、貴次は腹黒いというフレーズに思わず笑いそうになった。


冷たくて怖いとは思っていたけれど、腹黒いとまでは思っていなかった。


でも確かに腹黒そうだ。


子供はよく見ているなあと思った。
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