朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「立ち上がるのが辛いなら、余が抱っこして連れて行ってやるぞ」


「それくらい一人で歩けるよ。馬鹿にすんな」


 柚は冷たく言い放つと、一人でスタスタと寝台に歩いていった。


これにも深く傷ついた暁であったが、なんとか自分を慰め柚の後を追った。


 柚の隣に寝ころんだ暁は、いつものように寝る前に柚を抱きしめキスをしようと、ニコニコ顔で近寄ろうとしたら、柚が冷たい表情で「今日はキス禁止な」と言った。


 暁はまたも頭を鈍器で殴られたようなショックを受け、渋々柚に背中を向けた。


(いいのだ。余は、余は、理解のある男だから、受け止めるのだ)


 大きな背中が、なんだか小さく丸まったように見えて、柚は初めて悪いことをしたかなと思った。


(考えてみると、暁のキスは嫌じゃないんだよな。

初めてキスされた時も驚いて怒ったけど、貴次にされた時みたいな不快感は不思議となかった。

なんでだろ……)
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