朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
美女や男達が向かった方向に歩いていくと、立派な大門にぶつかった。


羅城門である。


朱雀大路の南端に構えられた正門で、この門をくぐると平城京の市街区域となる。


しかし、そんなことはまるで分かっていない柚は、何の感慨も抱かぬまま、すり抜けるように羅城門を通り抜けた。


平城京は、朱雀大路を軸として右京と左京に分かれているが、柚はなんとなくこっち、という感覚で左京を選んだ。


一坊大路を進んでいくと、活気溢れる賑やかな市に出た。


 老若男女、沢山の人でごった返していた。


道路の脇の地面の上にござをひき、その上に米や干魚、または太刀や沓などを置いて売り買いしているようだった。


売人の殆どは、無地の貫頭衣や横幅衣の麻服を着ていて、ござの上で座りながら客と商談している。


 一方、客の服装は色とりどりで華やかだった。


黄や藍や緑といった胡服を着ている。


草履を履いている人もいれば、木履を履いている人もいる。


それらの人々に交じって、ボロボロの麻服を着た裸足の子供が走り回ってもいた。
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