朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁は日中公務の仕事をしながらも、柚のことを思い出すとついついにやけてしまうので、真面目な顔をわざと作るのに必死だった。


会議中、無理やり眉根を寄せて真剣な顔を作っているので、周りから「帝は真剣に国のことを想っておられる」と感激されたりもした。


 貴次ならばすぐに、「この顔は心の中では卑猥なことを考えているに違いない」と見破られ怒られる所だが、最近は別のことで忙しいらしく側にいないことが増えていた。


口うるさく、生真面目な貴次がいなくて自由に伸び伸びと動けることも、機嫌がいい要因の一つでもあった。


(後は物の怪の一件さえ解決すれば、言うことないのだがなぁ)


 暁は紫宸殿から清涼殿へと向かう渡殿を一人歩きながら考えていた。


すると、清涼殿の奥の屋敷から活発な掛け声のようなものが聞こえていた。


 平城宮に勤める貴族でさえも、清涼殿にはめったなことがない限り出入りはしない。


まして家来や武人などは東舎にいるはずだった。


暁は訝りながら、声のする方向へと歩を進めた。


(この奥は稚夜の居所。何をしているんだ?)
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