朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
(……殺したくはない)


 貴次は心の中で呟いた。


貴次にとって最大の誤算は、暁が予想以上に強くなったことではなかった。


暁が、暁だけが稚夜に優しかった。


他の皇族たちは身体が弱く母方の身分が低い稚夜を邪険に扱っていた。


貴次が殺した暁の兄や姉たちも、稚夜を虐めては嘲笑っていた。


そんな中、暁だけが稚夜を守っていた。


生まれた時から能力が高く一目置かれていた暁に、兄や姉たちも反抗することはできなかった。


私利私欲を貪り、皇族の地位を利用して好き勝手に生きていた奴らは、貴次にとって悪鬼のように見えた。


だから、殺すことに罪悪感など一切生まれなかった。


むしろこいつらを根絶やしにすることが国のためとも思えた。


 しかし暁だけは違かった。
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