朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
貴次は人智を超えた存在になった暁に怖れながらも、最後のあがきで呪文を唱え始めた。


すると貴次の身体から黒い靄のようなものがどんどん溢れ出した。


物の怪を暁に正面からぶつけようとしたのである。


しかし、貴次の身体から出た物の怪は暁に襲いかかろうとはしなかった。


暁は悲しそうに首を振った。


「無駄だ。もう何をしても無駄なのだ」


 暁は憐れむような瞳で貴次を見据えた。


暁を襲わすために貴次の身体から出てきた物の怪は、暁の力が強すぎて喰うことができないと判断し、代わりに貴次を喰うことにした。


力を貸す代わりに、稚夜以外を除く皇族を喰わせることが貴次と物の怪との間に交わされた契約だった。
< 214 / 342 >

この作品をシェア

pagetop