朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
柚は一瞬喜びそうになった。


しかし、暁の思い出が全てなくなるのは嫌だった。


それに朱凰国のことも気になる。


「なあ、暁はどうなったんだ? 貴次や物の怪は?」


「ああ、あの帝は生きている。

貴次という男は物の怪に喰われて死んだよ。

だが物の怪と契約し、物の怪に喰われた奴は、あの世へはいけない。

物の怪の一部となり一生成仏することはできないんだ」


 柚は複雑な気持ちになった。


暁が生きていてくれたことは嬉しいが、貴次のことを知ると素直に喜べない。


ざまあみろという気持ちにもなれなかった。


ふとした時に見せる貴次の笑顔が、柚の頭の中に焼き付いている。


「あのさ、朱雀。私の命、他の人に譲り渡すことってできるか?」


 突然の申し出に、朱雀は驚いた。


「まさか、貴次って男を助けたいのか?」


「いや。貴次のことは、可哀そうだと思うけど、仕方ないことだとも思う。

貴次は、自分でした罪の償いをしていかなきゃいけない。

そうじゃなくて、私が生き返らせてほしいのは由良なんだ。

由良は私を助けるために死んだのに、私はそのすぐ後にあっけなく死んでしまった。

由良が死んで、自分はのうのうと生き返るなんてできない」
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