朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 帝のお手付きとなった女性とあえて結婚しようなどと思う男性は少ないと彼女たちも分かっているので公言しない。


夢のような一夜として、生涯心に仕舞っておこうというのが、彼女たちの考えだった。


 しかし、昇香だけは別だった。


遊女という立場でありながら、絶世の美貌で後宮に入ることができた彼女は、低い身分の中でも大きな野心を抱いていた。


 昇香の美貌に目を留め、元遊女であるならば楽しく過ごせるに違いないと考えた暁は、軽い気持ちで昇香と一夜を共に過ごしてしまう。


目論(もくろ)み通り暁と一夜を過ごした昇香は、次の日から「私はお手付きだ!」と騒ぎ立てた。


 更に「月のものが来ない、帝の子供を妊娠したかも」と言い、一大騒動を巻き起こし、その間に確実に地位を昇らせていった。


半年以上が経過し、妊娠していないと分かった時には、房(部屋のこと)を持ち付き人を幾人も従える立場に昇りつめていた。


 暁が沢山の女性に手を出していることは、一部では有名な話であるし、にも関わらず元遊女という低い身分にも関わらず、帝から寵愛を受けたと言って大きな顔をしている昇香は、影で蔑まされ風変りな女だと笑われているのだが、本人は全く意に介さない。


 元々教養もないので、お手付きと自ら名乗ることが恥ずかしいことだという認識がないのである。


暁は、厄介な女性に手をつけてしまったなと後悔したくらいなので、二度と昇香の元に訪れることはなかったのであるが、昇香は必ず帝は再び来てくれると信じているのであった。
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