朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~

柚の苦悩、の巻

柚と暁の間に不和が生じたことは、平城宮の人々にすぐに知れ渡った。


最近は気持ちがいい程晴天が続いていたのに、空はどんよりと暗く、雨はしとしとと降り続いている。


気持ちが悪いほど機嫌が良かった暁は、肩を落とし溜息ばかり吐いている。


暁から放たれる負のオーラは、まるで最近のどんよりとした天候そのものだった。


 毎日、職人たちが呆れるほど新居の建築具合を確かめに訪れていたのに、ある日からぱったりと暁の足が遠のいた。


天気が優れず、工事するのも大変となってしまったにも関わらず、職人たちは文句も言わず黙々と建築を進めていった。


皆、心の中では帝と妃のことを案じていたが、二人のことを信じ、ここで我々が手を休めてはいけないと奮起し頑張ってくれていた。


 そして、このような事態を招いた張本人である昇香は、自ら平城宮を去っていった。


あれほど出世に貪欲だった彼女が、突然あっさりと辞めてしまったことに周囲は困惑したが、昇香は誰にも何があったのか話さず、今後の行き先すら告げずに出て行ったのであった。
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