朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「は? 何が?」


 柚は歴史書から目を外し、あんたいつからそこにいたの? と歴史書に集中しすぎて如月の存在をすっかり忘れていた様子の柚が言った。


「いや、お勉強に集中してくださるのは大変有難いのでございますが、あまりに根詰めますとお体に差しさわるのではと思いまして……」


 如月は本当のところ、柚の身体を心配して言ったのではなく、人が変わったような集中ぶりがあまりに気味が悪かったので尋ねた。


「何かに集中してないと、余計なこと考えちゃうからさ……」


 柚は睫毛を伏せて、悲しげな様子で言った。


 ああ、なるほど、落ち込んでいたから勉強に逃避していたのかと如月は思った。


帝と何やら喧嘩したらしいと噂で聞いていた如月だったが、柚は別段変わった様子はなく、それどころかとても意欲的に勉強していたので、落ち込んでいないのだと思っていた。


だが、勉強嫌いの柚が、率先して勉強をしていたのは、帝とのことを考えないようにするためで、かなり柚も悩み落ち込んでいたのだということが分かった。


(分かりやすいというべきか、分かりにくいというべきか……)
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