朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 そして宴は日中夜続き、このまま夜が明けるまで終わらないのかと柚がげんなりとしていたその時だった。


おもむろに暁が立ち上がり、声をあげた。


「余と妃はこれにて失礼する」


 大音量の楽隊と、めいめいに盛り上がっていた人々の中で、暁の声は不思議なほどに良く通り皆の耳に届いた。


暁の言葉に、皆の動きが止まる。


「そんなことおっしゃらずに。今宵は大変めでたき日でございますぞ。朝まで我々と飲み明かしましょう」


 地方の豪族の一人が、酔って顔を赤くさせながら言った。


柚は内心、うげ、朝まで続くのかこれ、と思ったが顔に出さないよう必死で微笑みを絶やさずにいた。


如月にみっちり礼儀作法を叩き込まれたのが活きたようだ。


 暁は、酔って楽しげに騒いでいる臣下たちを見渡し、うむ、と一声呟き頷くと、また澄み渡るような、遠くまでよく聞こえる声で言った。


「さよう。今宵は祝いの席。遠路はるばる来てくれた者達もいるから、余が下がった後も大いに盛り上がると良い」


「ですが、主役がいないとなると……」


 宴を終わらせた方がいいのか、皆が顔を見合わせ始める。


すると、暁は座っていた柚の腕を取り立たせると、肩をぐっと掴んで自身の胸に埋めた。
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