朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
柚のために新築された常寧殿(じょうねいでん)は、天皇の住まう場所清涼殿に勝るとも劣らないほど絢爛豪華な造りとなっていた。


清涼殿ほど多くの殿舎はないが、身舎(もや)が五舎もあり、柚専属の召使いが住む場所や、湯浴びする場所、調理する場所など、常寧殿だけで十分生活することができる。


中でも、柚の寝所である飛香舎(ひぎょうしゃ)は、一室しかないにも関わらず一軒家並みの広さがある。


庭は前の寝所の倍の広さがあり、真ん中には大きなしだれ桜が植えられている。


部屋の中は、唐から取り寄せた最先端の調度品や家具が置いてあり、天蓋付きの大きなベッドは、大人二人が寝ても十分過ぎるほど広い。


暁にお姫様抱っこされて、初めて飛香舎に入った柚は、あまりに素晴らしい造りに声を失ってしまった。


切り立ての新鮮な木の匂いと白梅香のお香が、緊張する気持ちを静めてくれる。


暁は、ゆっくりとベッドに柚を置いた。
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