朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 鈴が鳴るような可愛らしい声だった。


顔を上げてニコリと微笑んだ様子もとても好感が持てる。


宮で出会った女たちは年増ばかりで、綺麗に着飾ってはいるが刺々しい印象で怖くて声も掛けられなかった。


しかし由良は歳も近そうだし、いい子そうだし、柚は途端に嬉しくなった。


「私、月島柚っていうんだ。柚って呼んでくれ。よろしくな!」


 柚が近寄って握手を求めると、由良は差し出された手を驚いた表情で見てから、ニコリと笑って顔を上げた。


「それではお言葉に甘えて柚様と呼ばせていただきますね」


 少し横に首を傾げ、上目遣いで微笑んだ由良は花のように可愛らしく、柚はその可愛らしさに圧倒された。


同じ女ながらも柚とは性格が正反対のようだったが、仲良くなれそうな気がして嬉しかった。


「呼び捨てでいいのに」


「それはできません、柚様」


「どうして」


「どうしてとおっしゃられても。柚様は異世界からいらっしゃったので分からないかもしれませんが、主人を呼び捨てにするなど恐れ多く……」


「ちょっと待て! なんで私が異世界から来たって分かるんだ!? てか、ここ異世界!?」


「言い伝えでは、朱雀の巫女は異世界からいらっしゃるそうですが、違うのですか?」
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