朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「違うっていうか、ここがどこかすら分かってなくて」


「ここは朱凰国(すおうこく)の都、平城京でございます」


「平城京!? それなら知ってる! でも朱凰国なんて聞いたことない。一体どうなってんだ」


「わたくしには何も……」


 困った様子の由良を見て、頭に血がのぼっていた柚は冷静さを取り戻した。


「そうだよな、ごめん、ちょっと取り乱して」


「とんでもございません。分からないことがありましたら、何なりとお聞きくださいませ」


 柚は由良の優しさに胸が熱くなって、泣きそうになった。


なんていい子なんだ。


自分が男だったらこの瞬間に恋してるだろうなと思った。


「ありがとう。

でも、私はここに長くいるつもりはないんだ。

なんかよく分からないうちに連れて来られてしまっただけで、帝の妃になるつもりなんかないからさ」


「まあ! 何をおっしゃられているのですか。

国中の女が憧れている斎暁天皇の正妻になることができるのですよ。

あの類まれなる美しい容貌と国一番の権力を持った御方。

帝は今まで妾すらお作りになりませんでしたから、今頃泣いている女は沢山いらっしゃるはずです」
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